ナマハゲ、ユネスコ無形文化遺産へ登録決定!そして、来訪神とは何ぞや?
大みそかの晩に「怠け者はいねがー。泣く子はいねがー」といって突撃訪問をかましてくるナマハゲ。
怖い顔してますが実は厄災を祓い、豊作・豊漁・吉事をもたらす神さま。
なんとこの神さま…無形文化遺産になります(厳密には違うけど世界遺産みたいな感じ。「和食」とか「歌舞伎」とかと同じ扱いに!)!!
ユネスコ無形文化遺産にナマハゲなど8県の「来訪神」 - 産経ニュース
https://www.sankei.com/life/news/181129/lif1811290028-n1.html
秋田出身というと、言われることトップ3が
「秋田美人だね」
「酒、強いでしょ」
「ナマハゲって怖かった?」
です。
秋田美人に関しては、秋田の女子(おなご)に課せられた十字架のようなもので、言われた瞬間(気を使わしてすまん・・・)という、お世辞への遠慮と感謝が入り混じった愛想笑い200%を発揮します。いや、嬉しくないわけではないんですが・・・。
酒が強いに関しては、私自身は酒好きですが、下戸の酒飲みで日本酒なら四合瓶程度で酔うので強さは程々です。しかし会社の社員旅行では貸切バス乗ったらまず缶ビールで乾杯でした。他の地元企業でもそんな感じらしいので、強い弱いはともかく飲酒量は確かに多いかもしれません(ちなみにその旅行、ちゃんとソフトドリンクもありましたのでアルハラではないです)。
ナマハゲに関してですが、これは説明するのに少々時間がかかりました。
「いや、ナマハゲは実物見たことないっす」
「え、だって秋田出身でしょ」
という一連のやりとりのあと、ナマハゲという行事は、秋田県の男鹿半島周辺の来訪神であって、秋田県全土に来てくれるものじゃないんだ。真冬に家に来てくれるものといえばサンタさんくらいだ。という話をするのです。
ここで「来訪神(らいほうしん)?」という質問が来ると、池上彰のような顔になって「良い質問ですねぇ」と話し出すのですが、上記の会話はいうなれば「あ、初めまして~」導入部分なので、そんなコアは話題に発展する機会はなかったです。
なので、ここで勝手に話し出しちゃいます。
来訪神(らいほうしん)とは、簡単にいえば特定の時期に、人間の世界とは異なる世界(異郷)から来て、福や富を授け、再び元いた世界に帰っていく神様のことです。
常に人間の世界にいるわけではなく、訪ねて来るので、来訪神。まあ、そのまんまですね。
けど、そのまんまの意味の、この来訪神という概念、日本だけでなく世界各地にずっと昔からある概念なのです。
例えば、お祭りの後で、せっかく作った神輿や山車を盛大に燃やしたり川や海に流したりしますよね。あれは祭のときに異郷からお迎えした神様を、元いた異郷へ送り出す意味があるのです。
また、かつては田植えの前に簡単な神棚を設け田の神を迎える行事がありましたが、あれは田植えに際し田の神様を異郷からお迎えするためなのです。
こういう臨時の神様をお迎えしたり、送り出したりする行事が日本のみならず世界の至る所にあります。
思えばサンタクロースだってそうですよね。あの行事はキリスト教信仰と土着の民間信仰が合わさるなどして長い歴史を辿っていますが、特定の時期に異郷からやって来て、人間に福を授けて帰る点など、まさしく来訪神。
だからこそ、世界中に広まったのかもしれません。
せっかく来たんだから、帰らずにずっとここに居てくれよ神様、主にサンタさん。なんて思うかもしれませんが、来訪した神様は役目を終えたら必ず元いた異郷に帰らなくてはならないのです。なぜなら、帰らないと祭が終わらないからです。
祭というのは非日常です。民俗学用語でいえば「ハレ」の時間ですが、これが終わらないのは恐ろしいことなのです。感覚的な話なので、具体的に何がとは言えませんが、正月三が日のように昼から暴飲暴食して布団と愛し合う日々が2月になっても続いているのに、誰にも怒られないどころか、みんなそんな状態だとしたら・・・、怖いでしょ。サンタさんだって、一年中常駐して子どもにプレゼントくれる神様だったら、今頃破産してます。
来訪神が人間の世界を訪ねる時は、人間にとって節目の時です。大晦日だったり小正月だったり、1年のリズムを形作る大事な日なのです。そういう日に異郷から来て「泣く子はいねがぁー!」と出刃包丁で教育的指導をしつつ福を授けるちょっと荒っぽい神様(秋田のナマハゲ)もいれば、凄まじい臭いのする泥を塗りたくって厄払いしてくれる神様(沖縄のパーントゥ)もいます。
こうした来訪神行事、かつてはもっと日本の至るところにあって、生活に根付いた行事だったのかもしれません。
私も子どもの頃に、ナマハゲみたいな来訪神に会ってみたかったです。きっと本当に異郷からやって来た、怖くて懐かしい、異形の神様に見えたでしょう。